それをいっちゃあおしまいよ〜

こないだ書いた、学校の研究誌に出した文章。好評につき?公開。

弱視者に、それを言っちゃあおしまいよ〜


私のような軽度の弱視者が言われて困る、お決まりの言葉があります。残念ながら盲学校内でもよく聞かれます。それらの言葉に対しての、ふだん言いたくてもなかなか言い返せない「軽度」障害者の心の声を紹介します。

・○○は見えているから(ほっといても)大丈夫
大丈夫なら、何で盲学校に来るんでしょう。楽だからでしょうか。学費がタダだからでしょうか。彼らは履歴書に盲学校卒業と書くことに抵抗がないのでしょうか。仕事をやめるのに悩みがなかったのでしょうか。友人たちと違う道を自分ひとり歩むことに抵抗はなかったのでしょうか。何もなさそうに見えても、盲学校進学を決めるまでにはみな悩んだと思います。学費がタダなら、あなたが今の仕事をやめて行きますか?
また、一度「見える人」「しんどい人」の分類が決まってしまうとなかなか臨機応変に変更してもらいにくい、というのも「どっちつかず」の私たちにはしんどいことです。
・やればできるのだからがんばりなさい
晴眼者社会で、軽度弱視の人間はなんとかやりくりしてがんばって適応することに「命をかけて」来ました。だから、やればできる、言われたらやりますよ。でも、なんで盲学校でそこまでやらなければならないんでしょうか。そんな思いでがんばっていると、かつての学校時代の苦い思い出が顔を出して悲しくなったりします。
・○○は普通と変わらないね
黙っていたらばれない、ということは軽度弱視者の「武器」でもありますが、なかなか困っていることに気づいてもらえない、ということでもあります。外では普通のふりしなければいけないことが多いけど、ここでは無理せず「素」のままでいいんだよ、と言ってもらえたらどんなに楽でしょう。
・もっと大変な人に比べたら恵まれている
急に視力が低下したり、病気になって困っている当事者が慣れない生活にイライラして、私たちに言うのなら、「大変な時期なんやろなあ」と思いもします。しかし、晴眼者から言われたらどうでしょう。あなたは私の子供の頃からのあんなこんなの出来事をどれぐらい知っているのか!と言いたくなります。日々戦いだった過去を思い出しつつ、そんな簡単に評価するなよ、とここまで出掛かって、でもこんなん言うてもなあ、と飲み込むのでした。
・手帳(障害者割引)ないの?
みんなで出かけるとき、介護者割引があると安く上がります。だからか、盲学校では障害者はみな1種の手帳をもっているのが「普通」ということになっているようです。「えっ、ないの?」と言われると2種6級の私などは迷惑をかけているようで、「すいません」と言ってしまわなければならないのです。でも、それって私が悪いんでしょうか。私たちは福祉制度の恩恵にあずかることは少なく、就職などもやれる程度まで晴眼者としてやって行くしかないのが現状です。それに、軽度であることは十分自覚しているので介助役などは買って出ているつもりです。
・(その程度で)障害を言い訳にするな
子供の頃から、言い訳したら負け、と言い聞かせてきました。どんくさいからできないのだ、と言われ続けてきました。目のせいでできない、とは言いたくもないんですよ。それを勇気を持ってあなたに打ち明けたとしたら、よっぽどのことだと思ってください。そして、あなたを信頼して言ったのだと。

障害者なんて普通でない人だから、特殊な学校とか施設の中にしかいない、と思うのは大間違いです。弱視はあちこちに隠れていますよ。職場内にもいることをお忘れなく。